第3章 鬼狩り
「なれるよ、きっとね」
リン、リン、リン
足を踏み出すたびに
小気味良い鈴の音が響いた。
サラサラと、乾いた秋の風が
無数の木の葉を揺らす。
「杏寿郎いないねぇ…もしかしてあの場所かな?」
「兄上はあの場所が好きですからね!
行ってみましょう」
きゅ、と私の手を握り直すと
千寿郎くんは歩きやすそうな道を選んで
先へ進んで行った。
この山は杏寿郎と千寿郎くんの3人で
昔からよく登っていた。
春は山菜採り
夏は虫取り
秋はきのこ狩り
目印がなくても迷うことはない。
「今日は俺の一等気に入った場所に連れて行こう!」
そう言って杏寿郎が連れてきてくれたのは
山の中腹にある開けた場所。
誰かが作ったのか、自然にできたのか
それは分からない。
眼下に広がるのは
家々が建ち並ぶ東京の街並み、
向こうのほうには海が見える。
太陽の光が海に反射して
キラキラと眩しかった。
「わぁっ!すごい!」
いつしかここは、
3人だけの秘密の場所となった。