第3章 鬼狩り
「千寿郎くん見て!綺麗だよ!」
そこには、今まさに太陽を飲み込まんとする
広い広い海が見えた。
水平線に、太陽が吸い込まれていく。
「とても美しいです!」
赤、黄、橙、金…
さまざまな色が代わる代わる瞳にうつる。
「あ…日が沈んでいく…」
夕日なんて毎日見ているはずなのに、
今日はやけに物悲しく見えた。
「提灯に灯りをつけましょう。
じきに暗くなります」
何度も登っている山ではあるが、
いつもは暗くなる前に杏寿郎が
家ヘ送り届けてくれたから
昼間とは違う山の表情に
少しだけ足がすくむ。
「雪華さん、大丈夫ですよ!
兄上はすぐにみつかります」
私の不安な気持ちを察したのか、
千寿郎くんは杏寿郎によく似た
太陽のような笑顔を向けてくれた。
リン、リン
ザッ、ザッ
鈴の音、私たちの足音、
風の音、木の葉の擦れる音
一つ一つがすぐ耳元で鳴っているようだ。
千寿郎くんが何かに気づき、
提灯をむけると人影が見えた。
「あっ!?杏寿郎!やっとみつけたぁ〜」
何とも間抜けな声が出てしまった。
恥ずかしい…
しかし、返事はなかった。