第2章 鍛錬
飛ばされた千寿郎くんを抱きかかえると、
足元にボロボロに引きちぎられた書物が
叩きつけられた。
紙くずがひらひらと
牡丹雪のように目の前を通り過ぎる。
「雪華!これ以上俺たちに首を突っ込むな!
死にてぇのか!!」
こめかみの血管が浮き出るほど
私を睨み付けると、
ドシ、ドシ、と大股で
槇寿郎さんは部屋を出ていった。
「千寿郎くん、大丈夫?」
「…はい。いつものこと、ですから」
瑠火さんが亡くなってからの槇寿郎さんは
目も当てられないほどだった。
朝から酒を浴びるように飲み、
幼い息子たちに手をあげるようになってしまった。
昔は杏寿郎とよく組み手や剣道のお稽古をしていたけど
それもなくなって、
杏寿郎は一人で鍛錬をするようになった。
時々様子を見にくる槇寿郎さんは、
「そんなことをしても無駄だ」
「お前にあれが使いこなせるわけがない」
と、厳しい言葉を
杏寿郎に投げつけていたけれど、
それでも杏寿郎は健気に
「俺は父上のような立派な剣士になる」
それが口癖だった。