第6章 すれ違う思い
話を聞くと、
杏寿郎が最終選別へ行く前に
これを渡して欲しいという事だった。
「槇寿郎さん!ご自分でお渡しになって下さい!」
「いや、…無理だ。
あいつの顔を見ると
まともに話せなくなってしまった」
俺は…自分が不甲斐ない。
そう言うと、
槇寿郎さんはつらつらと、話し始めた。
祖父や父がそうしてきたように、
俺も刀を握り、鬼殺隊へ入った。
瑠火と出会って夫婦となり
杏寿郎が生まれて、
初めて剣をふるう理由が分かった。
二人を失うのが怖かったからだ。
俺はそれから今まで以上に鬼狩りに没頭し、
任務といって何日も家に帰らなかった。
瑠火はもともと身体が弱く、
それに加えて出産、子守…
本当は…俺が瑠火の側にいてやるべきだった。
あの時の俺は、
二人を守るためなら自分が死んでも良いと
本気で思っていた節がある。
あちこちに傷を作り、
俺の血か、鬼の血かも分からぬまま
羽織を血塗れにして家に帰ったこともあった。
それでも瑠火は何も言わず、
俺の羽織を一生懸命洗っていた。