第5章 はじまり
「あぁ、いや…3日後の最終選別のことを
考えていた!」
今は口から出まかせを言うしか
己を保てない。
「そっか…また、今日みたいな鬼と戦うの?」
声を震わせ、顔を伏せて俺に問う。
「…そうだな。しかし、案ずるな!
今までの鍛錬の成果を発揮してくるだけだ!」
これ以上心配かけまいと、
意気揚々と答える。
雪華の強張った顔がほころぶと
「そうね」と口元が動いた。
あぁ、なぜ君は
こうも俺の心を掴んで離さないのか。
「さぁ、湯冷めする前に布団へ入ると良い」
「うん…おやすみなさい」
雪華の後ろ姿を見て、
ふいに母上の言葉がよみがえる。
「杏寿郎にも、大切な人ができれば分かりますよ」