第1章 美しい雪の精
「…杏寿郎は私が気味悪くない?」
「何故だ?
俺は雪華に初めて会った時、
美しい雪の精だと思った。
君の髪も、肌もとても綺麗だ」
「ふふ、ありがとう」
杏寿郎の大きな背中をぎゅっと抱きしめて、
「好き」と心の中で呟いた。
既に日が暮れかけて、
カラスが不気味に鳴いていた。
「…よし雪華、手当ては終わりだ
家まで送って行こう」
「大丈夫だよ、すぐそこなんだから」
「駄目だ。また危ない目にあったらどうする」
「その時はまた杏寿郎が助けてくれるでしょう?」
いたずらっぽく笑うと
杏寿郎はため息をついた。
「はぁ、雪華には敵わないな。
ほら行くぞ」
私の手を取り、私の歩幅に合わせて
ゆっくり歩き出す。
これからもずっと、
あなたの隣で笑いあっていたい。
そう願うのは、わがままだったのかな。