第5章 はじまり
「杏寿郎、父上がなぜ剣をふるうか分かりますか」
母上が俺を後ろから抱きしめながら言う。
暖かい母の温もりに、心がほっとした。
「えっと…鬼をたおすためです!」
「そうですね。でも、もっと大事な理由があるのです」
「…?どんなりゆうですか?」
父上は、鬼を倒すために剣をふるう。
それ以外に考えられることはなかった。
それはまだ、俺が子どもだったからだろうか。
母上を見上げてみると、
俺の思考まで全て読まれてしまいそうな
母上の目が、少し怖くもあった。
「…大切なひとを、守るためです」
「ははうえのことですね!」
「あなたもですよ。杏寿郎」
剣は鬼を倒すためにある。
そのように作られているからだ。