第4章 涙の色は
ザッ、ザッ、と草履を引きずる音がする。
「チッ…俺の若い頃にそっくりだ。杏寿郎。
ろくな大人にならんぞ」
「よもや!俺が父上に!?ありがたきお言葉!!」
「うるせぇ。早く家入って寝ろ」
なんだかんだ言って
私たちのことを心配してくれていたんだな。
槇寿郎さんは。
「雪華、父上がすまない。
大事ないか?」
「うん!それより千寿郎くんの手当てをしなきゃ」
千寿郎くんの背中には
痛々しい切り傷が残っていた。
しかしほとんど出血は止まっている。
「千寿郎くん、ごめんね。
しみると思うけど我慢してね」
「はい!」
湿らせた手拭いで周りの血を拭き、
軟膏塗った。
「いてて…」
「もうすぐおわるからね」
千寿郎くんが生まれた日、
私も一緒に立ち会った。
いつまでも可愛い小さな千寿郎くんだと思っていたけど
私の手を引いて、かばってくれたその姿は
幼い頃の杏寿郎にそっくりだった。