第4章 涙の色は
頭の先から、つま先まで
全ての血管に酸素を送り込むように。
吸う時は一気に、吐く時はゆっくり、長く…
ドクッ、ドクッ、ドクッ
自分の心臓の音しか聞こえなかったのに
深呼吸を繰り返していくうちに
風の流れる音、木の葉の擦れる音が
耳に届くようになった。
杏寿郎の瞳に、私が映る。
強張っていた杏寿郎の瞳が
一瞬緩んだように見えた。
「よし、早く山を降りよう」
千寿郎くんをおぶり、
私の右手をとると
歩きやすい道を選んで進んで行った。
あの日と少しも変わらない
温かい手。
杏寿郎、
あなたはいなくなったりしないよね…?
煉獄家が近づいてくると、
門の前で仁王立ちをしている
槇寿郎さんの姿があった。
腕を組み、明らかに怒っている。
「お前たち!何処へ行っていたんだ!」
「父上!帰りが遅くなり申し訳ございません。
俺を心配して、雪華と千寿郎が山に…」
「千寿郎はどうした」
「千寿郎くんは私を鬼からかばって怪我を…」
「父上!ご安心ください!
鬼なら俺が退治いたしました!」