第3章 鬼狩り
「おい、大丈夫か」
ぶっきらぼうな物言いの男だったが、
私を抱き上げる腕は
とても手慣れたものだった。
「こんなに小さい子を置いて逝くなど…
さぞ心残りであろう」
力なく生き絶えた母の目を閉じると
私を抱いたまま家を後にした。
「チッ…そんなに一緒がいいなら
二人まとめて喰ってやるよぉぉぉ!!!」
木の枝や落ち葉を
雑に踏みつける音が迫ってくる。
私は千寿郎くんを抱えて背を向けた。
杏寿郎!助けて…!!
炎の呼吸、壱ノ型
不知火!!
見覚えのある、鮮やかな炎が
私と千寿郎くんを通り過ぎる。
ドシン、と後ろで音がした。
「千寿郎!雪華!!」
「きょ…杏寿…ろ、ごめ…なさ…」
「千寿郎は大丈夫だ。傷はそこまで深くない
雪華、落ち着くんだ」
「あぁ…あぁぁ!!
お父様、お母様、華江…!!」
何故、何故?
何故私だけが生きているの?
嫌だよ、置いていかないで。
私も連れて行ってよ。
お願い、お願い。
「雪華、このままでは
恐怖に支配されてしまうぞ」
杏寿郎の手が
無理やり私の顔を上に向ける。
「俺の目を見て、深呼吸をするんだ」