第3章 鬼狩り
目の前に母が倒れている。
部屋の隅に置いてあった
行灯の光が、ぼうっと照らした。
「雪華…、逃げ…て…」
蚊の鳴くような小さな小さな声が聞こえる。
バキッ、バキッ
音のする方へ
少しずつ視線を進めるとそこは、
血の海だった…。
母は腰から下が無かった。
なぜ生きているのか不思議なくらいだ。
父が寝ていたであろう布団の上には
右腕と、左足が転がっている。
バキッ、ジュルル…
音のする方を見ると、
人の形をしたナニカが
小さな小さな妹の頭にかじりついていた。
「あぁ…!あぁぁ…!!」
声を出してはいけないと
頭では分かっていたはずなのに
無意識のうちに口からこぼれた。
「まだガキがいたのかぁ…」
まばたきをするその一瞬で、
そのナニカが私の頭を掴む。
「お前も妹と同じように喰ってやるよ…!!」
口の周りにべったりと血をつけ、
舌舐めずりをしながら牙を剥き出しにした。
炎の呼吸、弐ノ型
昇り炎天!!
目の前を真っ赤な炎が横切った。
炎がおさまると、
ナニカはさらさらと灰のように散っていく。