第3章 鬼狩り
今度は私が千寿郎くんを抱きしめると
ぬるりと生暖かいモノが触れる。
「千寿郎くん!千寿郎くん!!」
見なくても分かった。
これは、血だ。
寒い寒い冬の日、
私は4つ、妹の華江はまだ2つだった。
その日私は風邪をこじらせて、
別の部屋で一人寝ていた。
時々、母が様子を見にきて
冷えた手拭いを額に当ててくれる。
「雪華、明日お医者様に診てもらおうね」
「はい、おかあさま…」
熱のせいでぼーっとして
一日中寝ていたのに、夜になればまた
眠くなった。
うとうとしていると突然、
父の叫び声が聞こえた。
「何なんだ貴様!!ギャァアァァ!!!」
「あなた!!あなた!!!」
おとうさま?おかあさま?
ドタン!バタン!
何かが倒れる音、花瓶が割れる音
耳をつんざくような叫び声に怖くなって
耳を塞いで布団にくるまった。
しばらくすると静かになったので
熱い体をひきずって、
恐る恐る襖を開ける。
——カタン、
「おとうさま?おかあさま?」