キスしようとするとトリップするのやめてもらえませんか
第1章 はじまり
『は…?』
第一声がこんな声だったのは許して欲しい。
それ程までに理解不能な事に陥っているのだ。
ついさっきまで、車に轢かれそうな男の子を助け、死を覚悟した筈なのになんだこの場所は。
軽く身体を上下に動かす。
おぉ、なんて上質なベッド…弾む弾む…じゃなくて!
何故私はここに…と言うか此処はどこなのだ。
とりあえず部屋を見渡してみる。
え、何この部屋…ヴィクトリア調って言うの?外国風な感じ…。
置いてあるもの全てが高級品な感じがする…え、怖い。
次に自身を見る。
うん、さっきまで着ていたスーツだ…ちゃんと靴も履いてるしバックもベッドの上に…ってこんな高そうな部屋にどどどど土足…!!
やばい…へ、部屋の主が来る前に靴を脱がねば。
そう思い足に手をかけた瞬間
ガチャ…と言うドアが開く音が聞こえた。
「あーん?お前どっから入りやがった」
と男性の声が聞こえた。
怖い、怖くて顔を上げられない。
顔を上げないまま無言を貫く。
彼も無言のまま、どうやら私を見ているみたいだ、視線を感じる。
そしてチッ…と舌打ちしたのが聞こえた。
「アイツらの仕業か…おい、お前そこで大人しくしていろ」
そう私に声をかけ、再び開いたドアを閉め出て行った。
え…な、なんだったの…そう一息つく暇もなかった。
足音が、去ったと思ったが、すぐさま複数の足音が聞こえてくるではないか。
「おい、お前ら…これは誰の仕業だ?あーん?」