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月神の恋人 【鬼滅の刃 黒死牟 R18】

第12章 ※盛夏・残更の法悦※


「大丈夫です。ありがとうございます」

「それで・・・、全部か・・・」

「はい・・・」

キリカが掌に包み込むようにして受け取った。全て、黒死牟からの贈り物であり、かけがえのない宝物であった。

「そそっかしい奴だ・・・、」

苦笑すると、キリカの頭に掌を滑らせた。

「ゆっくり浸かってくるがよい・・・」

「はい。今から行って参ります」

「それとも・・・」

「・・・?」

「私が洗ってやろうか・・・」

「いっ、いいです!自分で出来ます!」

風呂で抱かれてのぼせた時の事を思い出してしまう。羞恥の念に全身が熱を帯びたように熱くなる。

「それは・・・、残念だ・・・」

予想通りの反応に黒死牟は喉の奥で笑った。掌をキリカの頭に置いたまま続ける。

「私が・・・、朝餉を支度しておいてやろう・・・」

「ありがとうございます」

「そろそろ・・・、お前の腹の虫が騒ぎだす頃合いであろうからな・・・」

「巌勝様っ!」

「冗談だ・・・」

優しいのか意地が悪いのか、よく分からない。堪り兼ね、キリカが膨れっ面をした。

と、その時。外で、ぽんぽんと弾けるような音がした。

「これは・・・?」

「花火の音だな・・・」

音のした方向に、黒死牟は耳を向けた。キリカも同じように耳を向ける。

「そう言えば・・・、麓の町の祭りの日であったな・・・」

「お祭りですか・・・?」

「祭り」と聞き、キリカの目が、ぱあっと輝いた。

「行ってみたいか・・・?」

「はいっ!あ、でもいいです・・・」

「遠慮をするな・・・。最近・・・、何処にも連れて行ってやれてないからな・・・」

「いいんですか。嬉しいです。」

「陽が沈んだら行くぞ・・・。それまでに支度をしておけ・・・」

「はい!」

忽ち、キリカが相好を崩した。桃色の唇から白い歯が覗く。目まぐるしく変わる表情は万華鏡のようだ。

「私、お祭りは初めてです。茶屋で働いていた時は、お祭りの日は書入れ時で忙しくて・・・」

「ならば・・・、良かった・・・」

「頑張って用事を片付けます!」

そう言うと、蝶が花を渡るような軽やかさでキリカが身を翻した。舞うように廊下へ消えていく。






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