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月神の恋人 【鬼滅の刃 黒死牟 R18】

第2章 夢惑う乙女


(よしっ)

心の中で小さく気合いを入れた。

部屋に戻ると配膳を終えた黒死牟が正座をし、キリカの訪れを待っていた。

「いつも、ありがとうございます。していただいてばかりで申し訳ありません」

謝意の言葉を述べながら、膳の前に座る。炊きたてのご飯の匂いが空腹を刺激した。

「いただきます」と手を合わせたキリカが、漆器の蓋に手を伸ばそうとした時、黒死牟に名を呼ばれた。

「待て、キリカ。ずいぶんと顔が赤いようだが・・・」

「えっ、本当ですか?」

答えたキリカの声は滑稽なまでに上ずっていた。動揺を隠そうと俯けば、黒死牟が立ち上がる気配がした。

「熱は無いようだが、ずいぶんと脈が早いな・・」

気付いた時には黒死牟の顔が真正面にあった。掌を額に置かれ、キリカの鼓動が一気に跳ね上がる。

「そっ、それは黒死牟様の気のせいです。どこも悪くないから大丈夫ですっ」

動揺のあまり、キリカの頭がくらくらしてきた。これ以上、追及されたらどうにかなってしまう。そう思ったキリカの必死の訴えが通じたのか、黒死牟が掌を下ろした。

「そうか。それならば良いが・・、人間の体は脆い。無理はせぬ事だ・・」

「はっ、はい。」

黒死牟が、元にいた場所に戻っていく。その後ろ姿を見ながら、キリカは小さく息を吐き出した。

(良かった・・。それにしても心臓に悪いわ)

ばれなくて良かったと安心しながら、箸をとった。

(美味しい・・)

行儀よく箸を運びながら、ちらりと黒死牟を見た。黒死牟は少し離れた所に座していたが、キリカの視線に気付き、此方を見た。

「黒死牟様は召し上がらないのですか?」

部屋にはキリカの膳しか用意していない。それどころか、黒死牟が食事をしているのを一度も見た事がなかった。

怪訝に思ったキリカは聞いてよいものかと逡巡したが、結局、好奇心の方が勝ってしまった。

「私は・・よい」

「ですが・・」

黒死牟の纏う雰囲気が、一瞬、険しさを帯びる。尚も言いつのろうとしたキリカが思わず身をすくませた。みるみる内に悄気ていく様を見て、黒死牟は「しまった・・。少々、やりすぎたか」と心の中で呟いた。

「私の事は案ずるな・・・」






















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