第5章 ※雨の蜜夜 とこしえの契り※
「それなら良かった・・・。まだ、あるから遠慮をするな・・・。お前は見た目によらず大食いだからな・・・」
「そっ、そんな事はないです。巌勝様が作ってくださる料理が美味しいから、ついつい食べ過ぎてしまうんです」
大食いと言われたキリカは憤慨した。唇を尖らせ、ぷいと横を向いた。
「そうか・・・。嬉しい事を言ってくれる・・・。礼を言うぞ・・・」
「巌勝様は召し上がらないんですか?」
「私は、よい・・・。食べるなら・・・、お前の方が・・・」
黒死牟の顔が近付いてくる。椀を手にしたキリカの耳元に、囁きと共に吐息が落とされた。
「と、言ったらどうする・・・?」
「どうもしませんっ。お椀を落としそうになったじゃないですかっ」
「悪かった・・・。だが・、その程度で動揺するおまえも悪いのだぞ・・・。もっと、虐めたくなる・・・」
艶めいた視線を向けられ、キリカが、ぞくりと身体を震わせた。欲望の導火線に火を灯される。胎内の欲の存在に驚きつつも、流れに身を任せた。
そして、再び抱かれた。二度目の交わりは一度目よりも激しかった。
黒死牟の技巧を極めた愛撫。情熱的な囁き。切なげな視線。
すべてがキリカの心と身体を蕩けさせていく。
愛しい人に求められる悦びを知ってしまった。以前のような、ひとり孤独な世界には、もう戻れない。
「巌勝様・・・・」
黒死牟の腕の中で何度も名を呼んだ。与えられ続ける快楽の波に、意識が飲み込まれていく。