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月神の恋人 【鬼滅の刃 黒死牟 R18】

第1章 月神と乙女


目を覚ますと、見慣れない天井が広がっていた。自分の部屋ではない事に気付くまで少しの時を要した。

(ここは・・・)

意識は霞がかかったように、ぼんやりとしていた。辺りに漂う花の香りの元を辿れば、それは自分が纏う夜着、しかもかなり上等な練り絹のものだと分かった。

(私・・・)

断片的な記憶を一つずつ、ゆっくりと手繰り寄せていく。

(・・鬼に襲われて、必死に逃げたけど・・、捕まりそうになって・・)

記憶と共に、鬼の声音や臭いも生々しく戻ってきた。

(怖い・・)

もしかして、その辺に鬼が潜んでいるのではないか。キリカは顔を強ばらせた。首を巡らせ、室内の様子を伺った。

広い室内は橙色の小さな灯りが二つ灯されているのみで、あとは闇に包まれていた。部屋の隅は不気味なほど暗く、今にも鬼が牙を剥いて襲いかかってきそうな気がした。

「目が覚めたか・・・」

ふいに障子の向こうで声がした。低く、落ち着いた男性の声だ。聞き慣れない声にキリカの体が緊張に固まる。飛び起きたかったが、体に力が入らなかった。

(誰なの・・)

鼓動が早まり、冷や汗が幾筋も滑り落ちていく。何とか体を動かそうとしたが、手足は震えるばかりで身動ぎすら出来ない。

「・・失礼する・・・」

静かに障子が空き、長身の男性が姿を現した。その顔を見た、キリカが「あっ」と声を上げた。

「あなたは、さっきの・・」

鬼に追いかけ回され、もう駄目だと思った瞬間、キリカの前に現れた男性だった。

「あなたが助けてくれたんですか?」

男性は「そうだ・・・」と極めて短く答えると、灯りに油を足した。室内が明るい橙色に照らされる。

(あ・・・)

キリカの視線は男性に釘付けになった。男性の容貌は筆舌に尽くしがたいほど整っていた。年の頃は二十代半ばぐらいだろうか。切れ長の双眸は涼しげで、鼻梁は高く通っていた。

額と首元には白皙に映える、炎の如き赤い痣があり、それが非常に特徴的でもあった。

これほど整った顔の持ち主と出会うのは初めてで、不躾と思いながらも、しばしの間、見とれてしまった。

「傷は・・・、痛むか・・・?」

キリカの視線を意にも介さず、男性は静かに言を紡いだ。そして、布団から少し離れた場所に正座した。











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