第13章 ※宵の宮・雨月夜の契り※
祭りの屋台では様々な食べ物が売られていた。気になり、幾度も立ち止まりかけたが、その度に我慢した。時間を掛けてめかし込んだのに、買い食いに精を出しては台無しだと思ったからだ。
「足りたか・・・?」
「ありがとうございます。さすがに、これ以上食べられません」
空になった茶器を卓司に置く。キリカは布巾で口元を丁寧に押さえると満足げに笑った。
「それなら良かった・・・。お前は・・・、意外と食い意地が張っているからな・・・。足りるか心配だったのだ・・・」
「巌勝様!それはどういう意味ですか?」
大食いだと言われたキリカが憤慨した様子で椅子から立ち上がった。が、途中で不自然な体勢で固まってしまう。
大食いだという自覚はあった。反論したかったが、何も言い返せない。
「・・・・」
力なく椅子に腰を下ろした。そして、決まりが悪そうに横を向いた。
(巌勝様の意地悪・・・)
わざわざ指摘しなくてもいいのにと、鼻に皺を寄せた。
(どうして、私は・・・)
先刻のくしゃみと腹の音。せっかく、時間を掛けてめかし込んだのに、これでは全て台無しだ。どうして自分は上品な振舞いが出来ないのだろうかと嫌になってしまう。
「キリカ・・・」
「・・・何ですか?どうせ私は大食いですよ。色気より食い気ですよ」
一息に言い放つと、キリカは拗ねたように唇を尖らせた。
「そう拗ねるな・・・」
「拗ねてなんかいません」
「キリカ・・・」
黒死牟は微かに苦笑すると、キリカの肩に手を置いた。
「私が悪かった・・・、機嫌を直してくれぬか・・・」
「・・・・」