第13章 ※宵の宮・雨月夜の契り※
焦らしに堪えかねたキリカが漸く声を発した。か細いが欲に濡れた声音に黒死牟は唇を笑みの形に歪めた。
「そうか・・・、触って欲しいのか・・・」
キリカの顔に横顔をぴたりとつけたまま囁いた。指が、物欲しげにひくつく花弁をなぞり上げる
「は・・い・・・」
切なげな表情を浮かべたキリカが消え入りそうな声で答える。羞恥に震えながらも、内心はこれから与えられる悦楽に胸を高鳴らせていた。
だが。キリカの期待を裏切るかのように、黒死牟の問いは続いた。
「指と舌・・・、どちらが良いのだ・・・」
「・・・それはっ・・・」
「触って欲しいのではないのか・・・、言わねば・・・、やめるぞ・・・」
からかうような囁き。さすがにそこまで言葉には出来ないと身悶えるキリカを見て、黒死牟は薄い笑みを浮かべている。
「どうして、そんなに苛めるんですか・・・?」
「苛めか・・・、それは違うな・・・、お前の望みを叶えてやりたいだけだ・・・・」
言って、キリカの花弁をなぞり上げた。僅かに指先が掠めただけで、キリカの腰がひくりと震える。
「・・・・やぁっ・・・」
「残念だ・・・。お前が言わぬのなら・・・今宵はこれで終いにするか・・・」
さも残念そうに呟くと、黒死牟は花弁から指を離した。
「巌勝様っ・・・」
キリカが離れていく黒死牟の腕を掴んだ。そして、うらみがましい目で見つめる。
自分から求めるのは恥ずかしくて堪らないのを黒死牟は知っている。知っていて、キリカに強要するのだ。
何て意地の悪い方だろう。そう思いつつも、身体を支配する疼きには抗えなかった。