第13章 ※宵の宮・雨月夜の契り※
湯上がりの蒸気した肌に張り付く薄衣。身体の線だけでなく、乳房の蕾、股の淡い繁みまで、うっすら透けて見える。
「・・・・っ」
食い入るような黒死牟の眼差しから逃れたくて、キリカは視線を反らした。
「目を反らすな・・・、私を見ろ・・・」
片手で自由を奪ったまま、キリカの頬に顔を寄せる。
「今宵は・・・、どのように可愛がってやろうか・・・」
再び囁かれた言葉にキリカの身体がぞくりと震えた。
「あっ・・・」
爪先から脛、膝、太腿。指でなぞりあげられたキリカが甘く掠れた吐息を漏らした。胎内の快楽の炎が早くも灯される。
薄く開かれた唇に、吸い寄せられるように黒死牟が口付けた。
「キリカ・・・」
唇を離し、惣闇色の双眸をじっと見つめる。キリカの身体から力が抜けていくのを感じ取ると、押さえていた両手首を解放した。
顎に手を掛け、より深い口付けを交わす。キリカも解放された手を黒死牟の背に回した。
「巌勝様・・・」
幾度目かの口付けの合間に、キリカは甘い声音で黒死牟の名を呼んだ。口付けを交わす毎に、身も心も甘美なもので充たされていくようだ。
名を呼ぶキリカの声音に欲をますます刺激される。貪るように唇を重ねながら黒死牟はキリカの帯をほどいた。
「美しい・・・」
黒死牟がしみじみと呟いた。常夜灯のぼんやりとした光が、キリカの裸身を闇に浮かび上がらせる。はだけられた薄物を纏った姿は、背から蜉蝣の翅を生やしたようにも見えた。
「・・・」
無言で自身の浴衣を脱ぎ捨てた。身体を密着させると、キリカの頬を両の掌で包み込んだ。深紅と黄金に輝く六つ眼で真っ直ぐ見つめる。
「巌勝様・・・」
心の奥底まで覗き込んでくるような眼差し。その美しさに見とれていると、黒死牟が唇を重ねてきた。