第13章 ※宵の宮・雨月夜の契り※
息苦しさに小さく喘いだ。それに気付いた黒死牟は漸くキリカの唇を解放した。
「今宵のお前は美し過ぎる・・・。周りの男達が皆・・・、お前を見ていた・・・」
キリカの耳元に唇を押し当てるようにして囁く。
「そんな・・・、気のせいです・・・、あっ」
耳朶に音を立てて口付けられると、キリカの身体がひくりと震える。
「キリカ・・・」
黒死牟の左手がキリカの浴衣の裾を割った。そのまま、内股を撫で擦る。
「んっ・・・」
キリカの唇から甘い吐息が零れ、膝から力が抜けそうになった。すがるように黒死牟に手を回す。
「巌勝様っ・・・」
「最も・・・、私もお前の美しさに当てられた一人だがな・・・」
低いが熱を孕んだ声音で囁きながら浴衣の袷を大きく寛げる。すべらかな白い肌、窪んだ鎖骨が露わになる。
唇を肩口に押し付けると、牙を軽く当てた。鋭い痛みが走り、キリカが思わず身悶える。
「んぅっ・・・」
「お前は・・・、私だけのものだ・・・。他の男になど渡すものか・・・」
血を吐くような叫びと共に黒死牟の擬態が解かれていく。闇より黒い漆黒の瞳が禍々しい深紅と黄金に変わっていくのを、キリカはじっと見つめていた。
「・・・やっと、いつものお顔に戻ってくださった。私、このお顔の巌勝様が大好きです」
くすり。困ったように微笑んだ。両手で黒死牟の頬を柔らかく包み込む。
「私は、巌勝様だけです。他の方なんて考えられません」
言って、黒死牟の身体にしがみついた。思いの丈を込めるように強く。
「お慕いしております」
「キリカ・・・」
黒死牟が応えた。キリカの背に腕を回す。唇を重ね合わせながら固く抱き合う。
(巌勝様・・・)
心の中で幾度も名を呼ぶ。愛しい気持ちをひたすら込めながら。
繰り返される口付けと、抱き締める腕の力強さにキリカは陶然とした表情を浮かべていたが。