第2章 前兆 前編
地球連邦軍北米支部ラングレー基地の格納庫、そこにセイカはいた。
普段の彼女とは思えないほどの大人びた表情で、整備員達に指示を飛ばしていた。
「タイプTTは、あのシステム周りには決して触らないこと。
それ以外は特に問題はないと思うけど、いつも通りできるだけ丁寧に扱ってあげてね」
「了解です」
「セイカさん、
予備のデータをゲシュペンストに残しておきますか?」
「うん、一応OSだけ標準に戻しておいてくれればいいから。次のパイロットが最適化しやすいように」
他の整備員にそれぞれの仕事を支持しながら、セイカはちょうどゲシュペンストMk-Ⅱのジェット・マグナムが付いている左腕部分にいた。
「…すごい。ここまでヒドイとはね」
このゲシュペンストMk-Ⅱはついこの間までキョウスケが使っていた機体。
全体的には特に損傷はないが、攻撃武器系統に問題が発生していた。
格闘専用のプラズマ・ステークが過度に利用されている為か、損耗度が激しい。
かろうじてまだ使用はできるものの、このまま使い続ければ攻撃の際にエネルギーが逆流し、暴発する恐れがある。
そして、よく見てみると関節部分にも無理が生じていたらしい。
彼がこの基地へ来て、まだ数回しか搭乗していないのにも関わらずここまでになるのは珍しい。
一緒にコンビを組んでいるエクセレンはある程度バランスよく機体を乗りこなしているのだが…。
「これって、やっぱり…」
今まで機械自体がパイロットの動きに付いて行ってない、ということ。
ラドム博士もそれに気が付いていたのだろう。
「だから、突撃型のアノ機体のパイロットに選ばれたわけか…」
現在、キョウスケはATX計画で開発されたPTのうちの1機である【アルトアイゼン】のパイロットになっている。
アルトは【絶対的火力をもって正面突破を可能とする】をコンセプトに造られただけあり、近距離・中距離の武器を備えた、まさに突撃くん。
本当ならゲシュペンストを母体にしているため正式名称は【ゲシュペンストMk-Ⅲ】なのだが、あまりに時代に逆行している設計コンセプトの為、コードネームで「アルトアイゼン(古い鉄)」という名で呼ばれてしまっている。
けれど、接近戦にはとんでもなく強い機体であった。