第3章 前兆 後編
だが、セイカにとっては予測範囲内…
否、それを“感覚”で感知していた。
キョウスケの言い方を真似すれば、まだ手札は残っている。
「ちょうどいい頃合いですわ、出撃を許可します」
「ねーさま、お願いネ」
『んじゃまあ、大きなくす玉でも拝みに行ってきましょっか!』
カタパルトから白い機体、ヴァイスリッターが華麗に飛び出す。
『人型のままで空を飛んでる…AMと同じテスラ・ドライブ!?』
『ポリシーには反しますが、陸戦型と空戦型に特化した機体の完成こそがATX計画の真の目的ですわ』
『ミサイル自体を破壊しないで、上手く推進装置だけを撃ち落として!』
『了解よ。所詮はゲシュちゃんだから操縦系には問題ないからねん』
『所詮…!?』
『まあまあハカセっ、今はミサイルを何とかしないと、ねっ?』
さすが高機動戦闘が得意なエクセレンは外すことなくミサイルの推進装置のみを撃ち落とす。
基地まで戻ってきたゼンガーに続いてキョウスケ達も同じように対処にあたる。
格納庫内で動き回っていたら、いつの間に戦闘は終了していた。
『ミサイルの処理、完了しました』
『新型が出てきて助かりましたよ、エクセレン少尉』
『んふふ~、お姉さんにお任せよん。何なら手ほどきしてあげましょうか、ブリット君』
『な、何の手ほどきなんですかっ』
いつものような調子で振り回されているブリットを見て笑っていると、
キョウスケから通信が入る。
『だがもう少し遅かったら危なかったかもしれん』
『それは人間レーダーのセイカちゃんの賜物ね』
キョウスケに向かって、セイカはVサインして見せた。
彼女の勘の鋭さはATXチーム、及びラングレー基地公認なのだ。
「親分、さっきの指揮官機の人…」
『気にするな。あの男は自分の考えで動いている…俺も同じだからな』
『では次に現れた時は…』
『お前のステークを撃ち込んでやれ』
『…了解』
相変わらずの仏頂面でキョウスケは答えた。
「何はともあれ…みんな、おつかれさまー」
にっこり笑って必ずセイカが言う言葉。
ありきたりの、何気ない労いの言葉ではあるが彼女のその言葉は不思議と安心感を与える力があった。
それが当たり前の日常の一つだった。
だが、近い内にその日常が失われることになるとは…
誰もがまだ知る由も無かった。