第2章 前兆 前編
「小型のテスラ・ドライブをATX計画のPTに搭載しちゃえばこれはもう戦局一変!敵もハダシで逃げちゃう感じなんでしょうかぁ…しゅてきすぎですぅ」
「開発当初はどうしても大型になってしまったから、戦艦とかにしか組み込めなかったからなぁ」
テスラ・ドライブを見せてもらいながら、すっかりセイカは妄想の世界へ陶酔していた。
「後はこれをヴァイスに付けてくれればいいんだが」
「お断りですわ」
「でもハカセ、あの機体は高機動戦闘に特化したものだから相性いいんじゃないですか?」
ATX計画で開発が進んでいるアルトアイゼン、その他にもう1機のPTがある。
こちらはゲシュペンストMk-Ⅱカスタムと呼ばれているもので、
コードネームは【ヴァイスリッター】と言う。
アルトが【肉を切らせて骨を断つ】タイプなら、
ヴァイスは【蝶のように舞い蜂のように刺す】タイプである。
だが、まだロールアウトまでに至っていない。
その理由が、今ぶち当たっている問題だった。
「EOTなどという怪しげな技術には頼りませんわ」
「でも装備すればヴァイス単体で飛行できるし、現状のバーニアスラスターで空を飛ばすよりは負担減ると思うけどなぁ」
「あなた、それでも私の助手ですの!!?」
「ひぃ…だ、だってぇ」
いつも助け舟を出してくれるリシュウがいないので、
マリオンからかなりダメージを受けていたセイカ。
先ほどから既に機嫌がよろしくなかった彼女は、眉間にシワを寄せかなりきつい目つきで少女を睨みつけている。
それでメゲるわけではないが、かと言って言い返してもきっと返り討ちにされるのはわかっていた。
小動物のように怯えているセイカを助けてくれたのはジョナサン。
「今のままでは明らかに連邦軍は不利になる。
従来の兵器や陸戦型PTでは、こないだ襲ってきたアーマードモジュール相手じゃ劣勢に追い込まれるのは間違いない」
先程までのやや飄々とした様子からは変わり、真剣な表情でそう話した。