第2章 前兆 前編
「セイカちゃん、普段の調子と整備をしている時とは雰囲気も性格も全く違うじゃない?キョウスケは初めてだから驚いちゃったのよ。…ほら、普段はおとなしいけど、夜になると…みたいな?」
「何の話だ」
「わかりやすく説明しただけだけどねん」
「へぇ~」
当の本人は半分他人事のようであった。
すると何事もなかったかのように、キョウスケが話を切り出してきた。
「この前、カザハラ博士が持ってきた積み荷についてラドム博士が相当不満そうにしていたが…」
「あ~~っ!!」
「わお、どうしたのいきなり?」
「カザハラ博士が見せてくれるって言ってたシロモノ!!」
セイカは手早く機体の整備を終わらせると、その場にいたキョウスケとエクセレンを残し猛スピードで格納庫を後にした。
「カザハラ博士ぇぇぇっ!!」
ズササ、と目にも止まらぬ速さで滑り込むように入ったのはATX計画のラボ。
当の本人は驚き、マリオンは冷ややかな目を向けていた。
彼女の態度はいつもの事なので気にしていなかった。
「…カザハラ、博士っ!…例の、タウゼント、フェスラーにっ、積んでいた、ブツを…!!」
「わ、わかった。わかったからそんな血走った目で見るんじゃない、可愛い顔が台無しだぞ」
彼、ジョナサン・カザハラはテスラ・ライヒ研究所の研究員。
つい先日積み荷の輸送をしている途中で所属不明機に襲われていたところを救出した。
向かっていたのがこの基地だったので、ちょうどいいと言えばちょうどよかった。
そして、その積み荷の中身を見せてもらう約束をカザハラ博士としていたのだった。
「研究熱心だな、もしかして俺に惚れたのかな?」
「そりゃもう!小型化されたテスラ・ドライブが観られるなんて!ソッコーで一目ぼれしちゃうかもですっ」
「おいおい、ソッチかっ。さすが君の助手ってわけだな」
「あんなもの、見るものじゃありませんわ」
マリオンはかなり不機嫌な様子。
彼女が中心として行っているATX計画の機体であるアルトアイゼンには、一切EOTの技術は使われていない。
それは彼女がその技術を嫌っていたためである。
ジョナサンが持ってきたのは、小型化されたテスラ・ドライブ。その名の通りテスラ・ライヒ研究所で開発された高効率反動装置。
これを用いれば大気圏内や宇宙での飛行も容易にできてしまうという代物。
