第9章 【フロイド】over over!!
大食堂で昼食を並べ開口一番にフロイドが投げた質問に、目の前で座っていたアズールが水を吹き出しそうになるのをみたジェイドは、楽し気に口元をおさえ含み笑いを飛ばす。
「フロイド、そう言う話は食事中にするものではありません」
やや零れた水をナフキンで拭いながら、アズールはフロイドを咎めた。そんな事は気にせず、目の前のパスタを口に運んだフロイドは、隣にいるジェイドに『そういうもんなの?』と視線を投げる。
「そうですね、デリカシーの問題ですので、何とも言えませんが、余り公共の場で大きな声で話すのはよろしくないかもしれません。愛しの監督生さんに聞かれてしまうかもしれませんよ」
ジェイドの視線の先には、いつものメンバーで食事をしているサユの姿が見えた。
フロイドは、彼女の様子を眺めながら、先ほどのスマホの画像を彼女と照らし合わせてみる。今までは何とも思っていなかったのに、何故か身体の中がモヤリとした感覚を覚えた。
陸で長く暮らすようになり、男性のそれを一人で発散する方法は知っていた。それは生理現象であり、必要なものであると言うジェイドの教えにより、定期的に行われていたのだが、先ほどのクラスメイトの話だと、男女でそれを発散する方法があるという事なのだ。
フロイドの知識の中では、交尾という類になるものは必要最低限行われるものであり、男女のそういった目的で行われるものには分類されていなかった。
「小エビちゃんも卵産む時、気持ちいいのかなぁ?」
本日二度目の水を吐き出しそうになるアズールを横目に、ジェイドは本日2杯目のどんぶりを口に入れ始める。
「陸の女性は、よほど注意深く体調管理をしていない限り、自分が排卵したことには気づかないそうです」
「そうなの?」
「えぇ、彼女たちの卵は目に見えない程小さいので」
きちんと学習していれば常識である陸の知識も、興味のあるところしか学んでいなかったフロイドには寝耳に水。
ミドルスクールの頃の教科書を引きずり出して来ようかとアズールは頭の中で考えていた。
「小エビちゃんのおっぱいかぁ……」
「フロイドいい加減にっ」
フロイドが、いつも抱きしめているサユの身体を思い出そうとしていると、アズールの怒りが声となって飛んできたため、これ以上のおとがめはごめんだと言わんばかりに考えることをいったん中止する。