第1章 【リドル】It's tea time①
困り顔のサユを見て、リドルはクスッと笑うと彼女に向かって手を差し出す。
「こっちへおいで、サユ」
そう言葉を掛けられて、それがまるで魔法の言葉かのようにふわりと心が弾むサユ。
机を回り、リドルの座っている大きな椅子の前に立つと、伸ばされた彼の手に自分の手を乗せた。
「いい子だね、サユ。今日のお遣いがキミでよかった」
ゆっくりと手を引き寄せられて、そのまま身体を反転させられ、リドルの足の間にすとんと座れば、優しく背後から抱きしめられる。
「ちょうど、会いたいと思っていたんだ」
耳元で囁かれる甘い言葉。
あの事件以降、紆余曲折ありながらリドルとサユは恋人という関係になった。
厳格な性格の裏にある彼の甘い行動はサユの気持ちを幸せにしてくれて、一人ぼっちで大変な学園生活も頑張れると、今では彼が心の支えにもなっている。
もちろんリドルも人から愛されると言う感覚をサユに教えてもらい、それを彼女に返す事で人としての成長をする事ができのだ。
今では、相思相愛と周りからもしっかり認識されている。
「リドル寮長?」
後ろから抱きしめられ、耳裏に唇を合わされて話をされるとさすがにくすぐったいし、恥ずかしい。
恐る恐る声を掛け、サユが後ろに顔を向けると、すかさずチュッと軽い音を立てて重ねられた唇は、甘いイチゴの味がした。
「2人きりの時はリドルで良い」
頬を赤く染めたサユは、少し俯いて恥ずかしいと口に零し、両手で頬を押さえる。
こうした初々しい姿もかわいいと、リドルは抱きしめていた手に少し力を籠めた。
「ところでリドル先輩?」
「何だ?」
リドルは名前を呼び捨ててくれない事に少し不服そうな顔をしながらも、片手を彼女の身体から離して、今度はサユの髪をいじり始めた。
抱えている彼女からは甘い香りがいつもする。
好きな女の子からは甘い香りがするのだろうか?とトレイに聞いて大いに笑われた事はつい最近の話である。