第1章 【リドル】It's tea time①
本日の授業を終えたサユは、学園長に依頼されたお届け物をハーツラビュル寮へと届けに向かう。
ハーツラビュル寮の寮長は厳格な性格で有名なリドル・ローズハート。
オーバーブロットの事件があってからはかなり丸くなったのは事実だけど、もともと真面目な正確なだけに、やはり厳格さは失われていない。
寮長の部屋まで依頼された書類を持って廊下を歩く。
赤いじゅうたんが足の裏にふわりとした感触を伝え、とても心地が良い。
オンボロ寮のじゅうたんもフカフカがいいなぁなどと贅沢は言っていられないけれどやっぱり羨ましい限りである。
寮長の部屋にたどり着き、規則正しいリズムでドアを2回ノックすると、「入れ」と短い返事が聞こえたことを確認してからサユは少し重たいドアを開けた。
机に向かって勉強でもしているのだろうか、ペンを忙しなく動かしている彼は顔を上げることなく書類を自分の所まで持ってくるように声を掛けてくる。
「ごきげんよう、リドル寮長」
礼儀正しく丁寧に、抱えた書類を落とさないようにサユが左足を下げて挨拶をすると、やっと顔を上げたリドルはサユの姿を見てニコリと笑みを見せる。
「よく来たね」
「学園長からの書類をお持ちしました」
サユは綺麗に揃えられた書類の束をリドルに手渡した。
手渡された書類をパラパラと捲り、ざっと確認を済ませたリドルは、書類を机の端に置き、自分が先ほどまで使用していたペンをケースにしまう。
「お茶をする時間はあるかい?新しい茶葉を手に入れたんだ。君が好みそうなものだよ」
午後の紅茶の時間……サユは少し困った顔をしながらハートの女王の法律を思い浮かべる。『第339条、食後の紅茶は必ず角砂糖を2つ入れたレモンティーでなければならない』サユは、レモンティーをあまり好んで飲まない。
それはリドルも十分承知している事であった。