第6章 【エース】Flour of heart②
「私こそ、ごめんね。エースはいつも私の事思ってくれてるのに……」
「どこかに出かけられなくてもさ、こうして2人でいられたらいいかなって」
はにかみながらエースがそう言ってくれてサユは嬉しさがこみ上げる。
「でも、本当に時間ができたら遊びに行きたいし、美味しいスイーツをエースと食べたい」
サユがエースの手を握って、そう話すとエースは彼女の身体を引き寄せて自分の胸の中で抱きしめた。
柔らかい身体と、優しく甘い香りがエースの周りを包み込む。
やべぇ、いい匂いすぎる。
そう心の呟いたエースはそっとサユの額にキスを落とした。
お互いの心臓の音がおたがに聞こえてしまいそうになりながらも、二人の甘い時間が過ぎようとしている。
エースは、徐にマジカルペンを取り出すと小さく呪文を唱えて、それを軽く振った。
一瞬にして、部屋の明かりが消え、次の瞬間天井に夜空が広がった。
「なに、コレ?」
驚きの声をあげるサユが天井を見回していると、エースの手が彼女の顎を掴みとり、そっと口づけを落とす。
してやったりの笑顔を浮かべ、悪戯が成功したと喜んでいるかのようなエースの顔を見つめれば、もう一度唇が塞がれた。
「ケイト先輩に教えてもらった魔法。女の子はこういうの好きって聞いたから」
「エース……」
サユはエースの身体にギュッと抱き付いて喜びを表すとエースもそれに応えるように彼女を抱きしめる。
頭部に顎を置いたような姿勢で、エースは大きく息を吸い、小さく咳ばらいをした。