第6章 【エース】Flour of heart②
今夜来る……と言われて、思わず全てのドアと窓の鍵を掛けてしまった。
サユは、自室のベットの上で思い悩む。
デートもろくにできていないのに、せっかく遊びに来てくれるというエースを追い出すなんて完全な拒絶になってしまうだろう……しかし、夜、男が女の元へ通ってくるという事は……。
経験の少ないサユにでも想像がつく。年頃の男女がひとつ屋根の下、いい雰囲気になったら、キスの先へ進むのだ。
いいのだろうか?それでいいのだろうか?
サユだって、エースおことは大好きだし、キスをするのも嫌じゃない、もちろんその先だって……と考えなかったわけではない。
しかしここは異世界である。
いいのだろうか?
サユが頭を抱えていると、玄関のチャイムが鳴り、その音に驚いたサユは思わず身体を跳ねさせた。
いつもならば、鍵が開いているので勝手に入ってくるエースも、今日ばかりは勝手が違い玄関を開けてほしいと合図を送っている。
サユは、意を決して彼を迎え入れた。
「何で鍵しめてんの~?」
いつもと変わらぬ様子のエースにサユは自分の考え過ぎだったのかもしれないと思う。よくよく考えたら今までだって彼がオンボロ寮に泊まりに来たことはあったのだ。
サユもいつも通りに振る舞い、応接室でお茶を出す。
「サユ、今日悪かったな」
「えっ?」
エースは、今日の草むしりの事が気になっていたようでサユに素直に謝ると、淹れてもらったお茶を口にした。