第4章 【トレイ】Eat me②
心配ではあるものの、命がどうにかなってしまう代物ではない事は分かった。間もなくトレイが来るだろうからとケイトは、サユを部屋に運び彼女を一人残して部屋を出る。
今にもキスされそうになってしまった事はトレイには内緒だ。
あれは、今、流行の即効性の媚薬だ。一時的なものでそこまで強力と言うわけではないから、学生の中でも使ったことがある生徒がいることは認識していた。
それにしても、なぜ彼女がそんなものを?と思いながら、キッチンを見渡す。
トレイの料理本と材料の数々を見れば、これから何か作ろうとしていたことは間違いがないが……。
小瓶に残る液体の残量を見て、ケイトはもう一度考えた。
サユがこんな魔法薬の事を知るはずがないし、これだけの量を一度に飲んだとなると……。
「サムの誤販売だな……」
恐らく、他の材料に混じって売られてしまったものだろう。
ケイトがため息をついて、先ほどのサユの痴態を思い出し、熱を上げそうになるのを必死に堪えたところで、トレイが到着した。
「サユは?」
「部屋に寝かせた……けど、ヤバそうだから、早く行ってあげて」
トレイに例の小瓶を見せれば、彼もそれが何だかわかったようで驚いた表情を見せる。
「すまなかった、見つけてくれたのがお前でよかったよ」
他の生徒だったりしたら、サユが何をされたか分からない所だ。
トレイはケイトに礼を言ってサユの部屋へ急ぐ。
ノックをしている暇はない。
トレイは、部屋に入ると一目散にベッドへ向かった。そこでは最愛の彼女が身を丸くして、その感覚に耐えるべく息を荒げている。
「サユっ」
名前を呼ばれてサユは、彼の方へ顔を向けた。
ぽろぽろと零れる涙は、異様に艶っぽく、トレイは息を呑んだ。