第4章 【トレイ】Eat me②
ドキドキと心拍数が上がっていくのが分かる。身体も熱くなって、先ほどまでのふわふわした気持ちはそれに加えて、身体が震えるほどに痺れていった。
感じたことのない感覚にサユは思わず身を屈める。
「トレイ先輩っ……」
顔は火照り始め、呼吸が荒くなり、トレイに会いたくて仕方がない。
自分が動かした手が胸を掠めると、あっ……っと濡れた声が出てしまった事に驚いた。
身体の熱はどんどん上がり、自分を保てない気がして、涙が零れる。
トレイが欲しくてたまらない……彼に抱き締めてほしくて……。
サユは小さな呻きを上げて、そのまま床に身体を預けた。
「サユちゃ~~んっ、トレイくんから預かって……って、どうしたの?」
そんなところにやってきたのはトレイから預かったノートを届けに来たケイトだ。
床でもだえ苦しんでいる様子のサユに掛け寄り、彼女を抱き上げる。
「ぁっんっ……ぃゃぁ……っん」
抱き上げられただけで思わず漏れ出てきたサユの嬌声に、ドキッとしてしまったのは嘘ではない。彼女の身体は熱く、息も乱れ、潤んだ瞳とほんのり汗ばんだ額、紅潮した頬を見れば思わず口づけしたくなるような艶があった。
これが親友の彼女でなければ、そう言った衝動に駆られてしまったかもしれないが、ケイトは深呼吸して冷静さを保つ。
「サユちゃん、大丈夫?しっかりして」
誰かに掛けられた呪いか、魔法か……ケイトはキッチンテーブルの上にある小瓶を見つけた。
「これって……」
刺激を与えないように、できるだけそっとサユをソファーに運ぶ。
小瓶の正体を探ろうと、彼女から手を離せば、ジャケットの裾をしっかり握られていた事に気付いた。
「ケイト…せんぱ……いっ…」
求めるような瞳に吸い込まれそうになる。
「サユちゃん、そんな顔してると俺も我慢できなくなっちゃうよ」
サユの手をジャケットから離れさせ、キッチンテーブルの上の瓶を手に取り香りを嗅ぐ、それと同時に、トレイにすぐに連絡を取った。
「やっぱり……あっ、トレイくん?大変、大変。サユちゃんがね・・・」