第3章 【トレイ】Eat me①
「かわいい顔が台無しだぞ」
サユの頬に手を滑らせたトレイは、そのまま彼女の唇に親指を這わせる。突然の彼の行動に、サユもドキドキと胸を鳴らし、期待を込めて彼を見つめた。
ゆっくりとトレイの顔が近づいてくる。
「ねぇねぇ、トレイく~ん」
ノックも無しにケイト先輩が部屋に入ってきて、サユは身体を強張らせた。
トレイも小さなため息をついてサユから手を離す。
「あら~、お邪魔だった?」
「そうだな」
そんな会話を交わす二人の声を耳にしながらも、恥ずかしくて顔を上げられないサユ。
「こんにちは、サユちゃん」
ケイトはお構いないしにサユの所に来ると、隣に座る。
「なぜ、お前がそこに座るんだ?」
その行動にあからさまな不機嫌を見せたトレイを面白がるようにケイトはサユの肩を抱き寄せた。
「いいじゃん、たまには」
「よくない。何しに来たんだ」
そろそろ本気で怒られそうだと察知したケイトは、リドルに頼まれたという新しい調味料を届けに来たらしい。いくつかの小瓶を机に並べ、新作スイーツを楽しみにしているというリドルからの伝言を残していった。
それらを受け取り、片づけを始めたトレイだが、いつまでたっても固まったままのサユを見て、クスクスと笑い出す。