第3章 【トレイ】Eat me①
「どうした?ぼーっとして」
新しい紅茶を運んできたトレイがサユの前にカップを置く。
ペンをクルクルと回しながら教科書を眺めていたサユはその声に驚いて思わずペンを落とした。
今日は、いくつか溜まってしまった課題を終わらせるべくトレイの部屋で2人きりの勉強会をしている。
生来、魔法魔術とかけ離れていたサユが何のい知識も教養もないままそう言った勉強をするのは至難の業、苦痛であった。
しかし、こうして大好きなトレイと勉強ができるのは嬉しくも思っている。
「分からない所があるのなら、遠慮なく聞いてくれ」
「ありがとうございます」
魔法理論の論文は読むのに疲れた。
魔法陣の書き取りは、そもそも上手く円形が描けず、先ほどトレイに大笑いされている。
「占星術にします」
占星術は少しだけ得意だった。
星占いの様なものはサユの世界にもあったし、やはり女子であるのだから、そういったものは嫌いではない。
中途半端に並べられた課題を見ながらトレイはサユの向かいに座ると、終わっているであろう課題に目を通した。
綺麗に書かれた文字は、女の子らしくかわいいと思う……が、魔法陣が苦手な事を思い出しまた吹き出しそうになる。
「トレイ先輩、また私の事笑ってます?」
「いや、そんなことは……」
「いいんです。どうせ私は魔法使えないんで、魔法陣が描けても何の役にも立たないので」
「ふて腐れるな」
トレイは、頬を膨らませているサユの頬を赤ペンで突いた。