第3章 【トレイ】Eat me①
「笑わないでください……」
「恥ずかしかったか?」
「あたりまえです!あんな……」
「あんな?」
妖しく笑うトレイがサユに近づき、あっという間もなく唇を塞がれた。
「こんなことしようとしていた所をケイトに見られそうになったから?」
顔を赤くしたサユは、何度も何度も頷く。
トレイは小さな小瓶を一つ取りだし、中に入っている綺麗な桃色の液体を振っていた。
「いい素材だ。さすがリドル」
突然キスをしておいて、涼しい顔で別の話題を振って来るなんて、本当に喰えない人であるとサユは眉間にしわを寄せる。
そんな彼が好きなので、文句があるわけではないが、いつも何も敵わないから少しだけヤキモチが焼けるのかもしれない。
「サユは、何が食べたい?」
「えっ?」
「トレイ先輩の作るスイーツは何でもおいしいので……」
「たまには、お前のために何か作ろうと思ったんだが?」
またサユの顔が赤くなる。
こう、コロコロと表情が変わる彼女の観察をするのも最近のトレイの趣味になっていた。
今度は困り顔をしたサユであったが、突然パッと顔色を明るくして両手を叩く。
「トレイ先輩っ!私も何か作りたいです」
「君が?」
「はいっ」
元気よく返事をしたサユ。
トレイの本棚から、数冊のレシピ本を借りて自室でスイーツの勉強をすると息巻いている。
「無理するなよ」
「大丈夫です」
ニコニコと笑顔になったサユは、レシピ本を大事そうに抱えていた。
トレイは、そんな彼女を優しく抱きしめ、額にキスを落とした後……何故だか小さなため息を溢す。
「サユ、それを読む前に課題を終わらせてくれ」
「あっ……」
サユが課題を終わらせる頃には、夜空に綺麗な星々が輝いているのであった。
……To Be Continue。。。