第2章 【リドル】It's tea time②
「リドル先ぱ……」
窓際に置いてあるなけなしのソファーでリドルは転寝をしていて、規則正しい寝息を立てている。
疲れているのだろう、自分の事をし終えた後にサユの事を迎えに来てくれた挙句、こんなに雨が降ったのだ。
魔法だって万能ではない、それはリドルもサユも身を持って体験していた事である。
サユは部屋に一度戻って、大きめのひざ掛けを取ってくると、そっと彼に掛けてやった。
恋人の寝顔は見ているだけでとても幸せな気分になる。
いつもならば、とても恥ずかしくてできないけれど、気分が高まっているせいだろう、サユはリドルの頬に軽く口づけを送った。
それと同時だ。
リドルの手がサユの後頭部に回り、離れて行こうとしていた彼女の顔は、それをすることなく再びリドルの顔に接近する。
そして重ねられた唇。
寝ていると思っていた彼の行動に驚いたサユは目を閉じる間もなく、熱いキスを送られて頭が混乱した。
角度を変えながら、何度も合わされた唇をリドルの舌がノックしてくると自然とサユの瞳は閉じられ、それに応えるように小さく開かれる。そんなサユの唇の隙間からリドルのそれが遠慮なしに入り込んだ。
支えられた後頭部の手も、いつの間にか体に回されている腕も熱く優しくサユを抱えていた。
長く甘いキスに酔ってしまえば、上がった呼吸を整えるため、自然と唇が離される。どれくらい重ねていたのだろうか、まるでリドルの唇と溶け合ってしまったかのような感覚が体中を駆け巡った。
大きく息を吸ったサユは、驚いた感覚を突然思い出し彼の名前を呼んだ。
「リドル先輩っ」
悪戯な笑みを浮かべて互いの唾液で濡れた唇を軽く拭ったリドルは、もう一度と言わんばかりに再びサユの頭部へ手を回す。
「……ダメですよ。もう……時間も遅いですし……」
一緒にいたい気持ちは山々であるが、既に遅い時間でリドルは寮へ戻らなくてはならない。ルールを破らせるわけにはいかないのだから、自分の気持ちを押し殺してサユはリドルの胸を押し返した。