第25章 我、道を行く(ヘタリア)
「あの…王耀さん。
先程はすみませんでした」
営業時間が終わって1時間くらいしてから、本田とトイレでばったりと会った。
「別にお前に怒ったわけじゃねーあるよ。何に謝ってるあるか。意味のない安い謝罪はいらねーある」
ただ八つ当たりをしたようなものなので少し気まずい。謝られると逆に困る。
「…はい」
王耀の言葉に、ますます申し訳なさそうな本田。
これでは収拾がつかない。
「お前めんどくせーある!一発殴らせればチャラにしてやるある!」
そう言って胸倉をつかんだ。
「は?嫌ですよ、なんで殴られなきゃならないんですか!」
さすがにこれには反応した。本田は王耀の掴む手を放そうと抵抗する。
「だったらこの話はなしある!いつまでも引きずる白痴は殴るね!」
そう言って本田の服を放した。
本田は一瞬お礼を言おうかと口を開けたが、また怒られそうなのでやめた。
「『帳の王』…?
聞いたことありませんね。…ああ、私は世間知らずなのでそう言った噂にはとんと疎いもので」
本田の部屋でお茶を飲みながら、王耀はここに来た本来の目的でもある『帳の王』について聞いてみた。
「噂なら、ギルベルトさんのほうが詳しいですよ。あの人情報屋もやってますし、いろんなところに潜り込んでいろんな名前を持ってますから」
「お前が信用できるっていうなら信じるね。…でも我は一度しか話したことないから、どんな男か知らないある」
そう言って、煎餅とやらをかじった。
すると、しばらく無言で本田が我を見てきた。
「なんあるか。男に見つめられる趣味はないある」
「あ、すみません。…信じるなんて面と向かって言われる機会がないので…ちょっと…」
うれしいやら、恥ずかしいやら、と言って照れていた。
やっぱり変な奴ある。信用できるから信用できるって言っただけなのに。