第25章 我、道を行く(ヘタリア)
スーパー銭湯・小金の湯には8つの風呂がある。
建物が全体が小さいため、ひとつひとつもそんなに大きな風呂ではないが、そこすべてを掃除するのは容易ことではない。
「ほ、本田…今まで、お前一人でこれ全部やってたあるか?」
「え、はい…フランシスさんは経営者ですし、他二人はあまり掃除はやらないですから…」
どちらかというと、接客担当です、と本田は言う。
しかし、アントーニョはとにかくあのギルベルトが接客なんてする(できる)のか。
「なんであいつらが上司あるかー…」
本田が上司ならともかく。
デッキブラシで器用に頬杖をつき、小声でそう言って横目で本田を見た。
「私は…ものを作ったり直したりは好きですが、人と交渉するのはうまくないので、この世界で上手くやっていけるとは思えません」
気まずそうに言って黙々と掃除をする。
「うがー!そういう考え方は嫌いある!なんかずるいある!男だったら大志を抱くね!」
「ず、ずるいって…わ・私は己の器を分かっているつもりです」
「わかってねーある!この白痴!ただバカなだけある」
王耀は自分が何しゃべっているのか分からなくなって掃除を再開した。
「…そういう王耀さんは、夢があるんですか?」
少し照れたような本田が聞いてきた。
「夢?…夢と言うか、やることはいっぱいね。
志と言ってほしいある」
「こ、志ですか。夢よりずっと重い言葉ですね…。
なんかかっこいいです…」
口にするのも憚られます、と本田は笑った。
王耀は、またしてもうがー!となったが、とりあえず掃除を続けた。