第25章 我、道を行く(ヘタリア)
こうして案内されたのは、どうやらスーパー銭湯。
少し南の島のような造りで、中には偽物の木がいくつか立っていた。
寒い地域の人たちはこういうのに憧れるのかもしれない。
「風呂は宿泊施設で入るからいいある」
「そういうなよ。あ、それにな。べつに客として来店してほしいわけじゃないんだよ。…さっきあんたに声をかけてきた野郎もさ。
あいつ、風俗系の店の幹部さ。…顔のいいやつをああやって入り口の前で1日中声をかけてる。
まあ俺は実はナンパしようと通りかかったんだけどな」
「最悪ある」
王耀は弱みを握られている分抵抗の仕様もなかった。
「は・初めまして…」
王耀に最初にあいさつしたのは同じく東洋系の男だった。
「これから私が一通りご案内したいと思います」
もしかして、同じ中国人か?とも思ったが、こんなところに出稼ぎに来るほど貧しいと思うと、あまり詮索するのも悪いなと思った。
そんな王耀の気持を察したのか、彼は、
「私は本田菊。日本人です」
微笑みながら言った。
「日本…」
久しく聞く名に王耀は息を飲んだ。
数十年前に伝説の島に認定された国。すべての国と国交を断絶し、海の底で暮らしている民族のはずだ。