第24章 クニゾンクエスト(ヘタリア)
思いもよらぬ主の言葉に、ライヴィスは絶句する。
「本当の噂を言ってごらん」
イヴァンはライヴィスの頭に手を置いて、優しく囁きかける。
ざわついていた王間は一瞬で凍りつき、静寂が広がる。
少し間をおいてライヴィスは息を整えて答えた。
「は、はい…。王は、実に聡明で…」
「ライヴィス、君は知っていると思うけど、僕はそんなに気が長くないんだぁ。
もう一度言うよ、本当の噂を言ってごらん?領主の僕を裸の王様にするつもりかい?」
ライヴィスには、この日ほど王が大きく見えた日はない。
普段口の堅いはずの彼は、この緊張から逃れるために口早に答えた。
「はい!人をいたぶることを好む冷酷で残虐な豚野郎だって言ってました!」
「…そう。で、誰が言ってたの?」
「あ…」
自分が口走ったことに気がついて、ライヴィスは口を手で覆ったけど、時すでに遅し。
目の前の王は平時と変わらぬ表情でライヴィスを見据えている。
だからこそ恐ろしい。
ライヴィスは強く目をつぶって大声で答えた。
「北サランの…フェリクス・ウカシェヴィチ様です…!!」
王間は変わらず静寂に包まれていた。
ライヴィスの声はいつまでも部屋に反響し続けていた。
「…はい。よくできました。
この税品は持ち帰っていいよ。 今月から君の領地の税金は10パーセント下げてあげる」
イヴァンはポン、と一度ライヴィスの頭を叩いて、玉座に座った。
肘かけで頬杖をつきながら少し何かを考えていたが、思いついたように言った。
「よし、来週北サランを攻めよう」
その言葉に、ライヴィスはもちろんのこと、部屋にいる全員が凍りついたのは言うまでもない。