第3章 朝のない世界で(神威/微裏夢)
ぼんやり声を聞いていた私は、一気に目が覚めた。ビクッと体が反応してしまった。
「君も、そうなの?」
私の反応を見て、神威は再び覆いかぶさって来た。
「団長、俺いるんだけど」
「別にいてもいいよ」
「勘弁してくださいよマジで」
「いや!!」
そんな会話を聞いていたら、私は思わず神威の手を振りほどいた。
彼は少し驚いた目をして私を見る。
「いや…」
その蒼い瞳が怖くて、目をそらした。
沈黙の中、
「はぁ…たまりませんな。俺はもう行きますよ」
と言って阿伏兎が部屋から出て行った。
「…嫌がられると、無性に血が騒いじゃうから、やめてくれる?」
神威は私の胸に一度顔をうずめて、勢いよくベッドから飛び起きた。
そしてすぐにテーブルにあったお菓子をつまんだ。
まるでずっと飢餓状態みたいだ。
彼は貪欲で、痛みを知らない。
ただ、ときどき目が覚めたように私から離れて一人で考え事をしている。
そして決まって、
「ごめんね、五十鈴」
そのときだけ私を名前で呼ぶんだ。
憎ませてくれないのね、ずるい人。