第13章 窓辺で愛は語れない(フランシス夢)
「レディーの前で剣を抜くなんて紳士失格じゃないか?」
アーサーの声だ。
「そういうお前だって…」
と言って横目で見れば、今日の衣装はバイキングだった。
「ってお前、海賊じゃねえか!」
「昔の衣装さ。今日の俺は紳士じゃないぜ」
そう言って宝石のついた長剣を構えた。
「ちょ!お前らどこまで俺の萌えのツボを心得てやがる!」
ちょっとみなぎってきたが、そんなこと言ってられる状況でもなかった。
「おい、フランシス。ここは俺に任せて姫様連れて逃げろ。
捕まるなよ」
「誰に言ってんだよ」
言い返しながらも再び姫を抱えて走り出した。
「ふ・フランシス!私だって走りたい!」
「お、助かるぜ。腕が痺れてきた」
こうして手をつないで街の中を走り出す。
しかし、街の中にもすでに追っ手は放たれていた。
街の中では静かに追っ手たちがこちらを窺っていた。
隙があればこちらに矢が打たれる。
「ち。姫を狙うんじゃねえよ」
どうやらスキャンダルになる前に姫を消そうとしているようだった。
このままでは姫の命が危ない。
早いうちに港で船を手配したいところだが…
追手をうまく巻くことができないんじゃ…港にも行けない。
(…このままじゃ確実にまずい)
そう思った時、「きゃ!」と姫が短く悲鳴を上げたかと思うと路地裏に姿を消した。
「姫!」
俺は急いで路地裏に入った。