第13章 窓辺で愛は語れない(フランシス夢)
城の庭内を走り回っていると、本田の声がした。
「こちらです、フランシスさん!」
そう言って塀に縄梯子を掛けた。
「に、忍者じゃねえか!」
本田の格好に驚いた。本物の忍者だった。
「ええ、私は実は武士兼忍者なのです」
「うっひょー!今度無事だったら詳しく話聞かせてくれよ!」
そんな会話をしながらも姫に縄梯子を登らせる。
しかし、衛兵たちは徐々に数を増やし確実に追いついてくる。
「そうですね。では今度ぜひフランスお料理をごちそうしてください」
そう言って本田は城壁から飛び降り、刀を抜いた。
「あとは任せてください」
「メルシー、本田。知り合ったばっかりなのに本当にありがとう。
絶対死ぬなよ」
「はい。またどこかでお会いしましょう」
そう言って本田は衛兵たちに向かって走り出した。
「ここは通さない。この城に入った時からお前は怪しいと思っていたが…姫を誘拐するとは肝の据わった野郎だ」
巨大な剣を持った騎士が道を塞ぐように立ちふさがった。
「そこを通しなさい」
姫が俺の腕からスルリと飛び降りて、騎士に言った。
「姫様。これは一大スキャンダルですぞ。今この男を殺して城に帰れば誘拐事件として事を終わらせることができます」
騎士は背中からその剣を下した。
「いいえ。そんなことはさせません。スキャンダルにでもなんでもなればいいのよ」
「姫様。お国を思う気持ちが少しでもあるのならお帰りなさい」
姫は、その騎士の言葉に、グッと唇を噛みしめた。
だけど引くことはできない。
隠し持っていた短剣を抜く。
「私にはもう身分などありません!」
そう言ってその長い髪を自らバッサリと切った。
その迫力に、俺も騎士もしばらく呆気にとられた。
「立派な騎士だねぇ、あんた。でもさ、ここは自由の国フランスだぜ。国の為に人の恋路の邪魔するっていうんじゃ、この百戦錬磨のフランシス様が黙っちゃいないぜ」
フランシスも剣を抜いたが、そのフランシスの剣を掴む者がいた。