第13章 窓辺で愛は語れない(フランシス夢)
「うまく行ったのか?」
部屋を出ると物影からアーサーが顔を出した。
「ああ。事を済ませて出てきた。十分楽しめた」
歩きながら蝶ネクタイを外し、それをアーサーに投げて行く。
「ちょっと、おい!馬鹿、なんでここで脱ぐんだよ」
俺は無言で上着をアーサーに投げつけ城の外に出た。
そのままズンズン歩いて行くと、背後から声がした。
「待ってよ!フランシスーーー!」
姫の涙声が聞こえた。
ゆっくりとそちらを振り返ると、姫はベランダから叫んでいた。そうしたかと思ったら、ドレスの裾を思いっきり引き裂いた。
そして、手すりに足をかけた。
「ちょっと、待て…お前…!」
俺は急いでベランダの前まで走った。
ドサ
落下してくる姫を間一髪で抱きとめることができた。
「何してんだよ、お前!危ないだろ!」
「だって、フランシスが勝手に行っちゃうんだもの!勝手にもう来ないなんて言って、勝手に行っちゃうんだもの!」
姫は、これまでにないくらい取り乱してヒステリックに叫んでいた。
「私だって本気で愛しているのに、あなただけを…」
ヒステリックに叫び続ける姫を俺は力強く抱きしめた。
夢にまで見た姫の感触。
「ごめん」
その感触にしばらく酔っていたかったが、時間がない。衛兵が聞きつけてこちらに走ってきた。
俺は彼女を抱えた。
「あ、私…落ちちゃったところを助けてもらったって言ってみるわ」
「へへ。こんな熱い抱擁見られたらそんな言い訳信じてもらえるとは思えないね」
「え!」
彼女は短く叫んで赤くなった。
こんな状況じゃなきゃ襲うのに、残念。