第13章 窓辺で愛は語れない(フランシス夢)
「ふ、フランシス!?」
「姫、ご無沙汰しておりました」
俺は人形を腹話術のように操って見せた。
今日は部屋で姫と会った。
アーサーが持っていた給仕の服を借りてきて、その格好をしている。この身分でこの恰好はちと恥ずかしいが、そこは姫の為。むしろ着ることに燃えた。
あとはアーサーと本田が内部操作をして、うまく俺を侵入させてくれた。
「こうしてまた…会えたことが奇跡のようです」
恭しく礼をした俺を見て、姫は悲しげに目を伏せた。
「あなたは、美しい」
悲しげな表情もまた似合う。
いつものようにすらすらと美辞麗句が出てこない。
この状況に緊張しているのだろうか。
「あなたは…」
「私は、あなたにとってただの戯れだと思った時期もありました。…でも、こうしてまた会えて余計に怖くなりました。
戯れであったのなら、よかったのに」
そう言って彼女は顔を手で覆った。
この行動が戯れではないという確信になってしまったのだろうか。
俺の本気は、彼女を傷つけるだけなのだろうか。
「姫…」
俺はここで別れを告げるべきなのか。ここまでなのか。
そう思ってウサギをそっとソファに寝かせた。
「俺は、…もうここには来ない。
あなたにこれを返すためにここに来たから」
姫の顔をまともに見ることはできなかった。
姫も同じ気持ちなのだろうか。ただ無言で立ち尽くすだけ。
俺はそのまま姫の部屋から出た。