第13章 窓辺で愛は語れない(フランシス夢)
「ここのチーズまずいだろ」
「うるせぇ。俺はここで一番好きなつまみなんだよ」
そう言ってチーズをナイフで切りだした。
変なところ上品ぶってるよな、こいつ。
そんなアーサーを見ていたら少し冷静になってきた。
俺はワインを注文した。
「どうしてこう、うまくいなかいものかねー…なあアーサーくんよ」
「うまく行かなきゃ違う女に乗り換えるんだろ」
「ニュアンスがちがうんだな。俺のは人間愛と言ってだな。万人にこの愛は降り注ぐのさ…万人という名の女と一部の男子に」
「くせえくせえ嘘くせえ。
なんだ、珍しくへこむ振られ方でもしたのか」
「そうなら何百倍もマシ。こんなのって、ないよなぁ」
そう言ってフランシスは自嘲気味に笑った。
「失恋でもない…(また)不倫がバレた?」
クイズかよ、と突っ込みを入れながらアーサーのチーズに口に頬り込んだ。
「くぅ、まずい」
「だったら人の物食べるなよ馬鹿ァ!」
こいつに相談なんてしたら、それこそ俺は落ちぶれる、と思った。
しかし意外に親身になってくる。
隣に座るウサギを見ながらアーサー言う。
「まあ…あっちはお前に気があるみたいだし、こっちはこっちで好きなんだろ?
それで何でうまくいかないんだ?やっぱり不倫なんだろ」
「お前なんでそんなに不倫にさせたいんだよ」
「だってそれしかないだろ」
お前、何回不倫がバレたんだ?と聞き返したいが不倫談義がしたいわけじゃない。