第13章 窓辺で愛は語れない(フランシス夢)
「よぉ」
バーで飲んでいると、嫌な奴にあった。
ライバルのアーサーだ。
こいつと何度女やらカジノの勝敗やらで一騎打ちをしたことか。
「一人で飲んでるなんてさびしい野郎だな」
そう言って隣の席に座ろうとした。
「一人じゃねえよ」
椅子を軽く引いたところでその答えの意味がわかったようだ。
あのウサギのぬいぐるみのことだ。
「おお、先客がいたのか。
って、お前どこまで落ちたんだー!?」
もうすでに酒が入っているのか、俺の肩を組んできた。
「よせよ、アーサー。レディの前だぜ?」
「はははは、なんだこのウサギー。きもいぞお前」
そう言ってウサギを操って馬鹿にしてくる。
「返せ、この野郎!」
アーサーからウサギを奪い返し、突き飛ばした。
「いてぇな、馬鹿!」
「酒臭いんだよ、馬鹿はお前だ馬鹿!」
「なんだと、勝負か!?」
「…うるさい、今日は飲みたいんだ!喧嘩するならどこか行け!」
実はうさばらしに喧嘩しに来たアーサーだったが、釣れないライバルにちょっと拍子抜けした。
「ふーん。女だな」
突拍子もなくアーサーは俺にフォークを突きつけながら言った。
「お前が荒れるとしたらそんなとこだろ、そしてこれは女からのプレゼントだな」
そう言ってウサギを指差した。
どうでもいいだろ、と言って再び酒を煽る。
酔いが覚めたのか、アーサーはウサギとは別の席に座りながらチーズを注文した。