第12章 落ちている人形を拾ってはいけない(ヘタリア・アーサー<英>)
「お母さんもお父さんも仕事だから夜まで帰ってこないから、大丈夫だよ。
さっさと洗っちゃおう」
「ちょっと待て。
『洗っちゃおう』ってまさかお前が洗うつもりじゃ」
「え?そうにきまってるじゃん。他に誰がいるの?」
「じ、自分で洗える!!余計なことするなよ、バカぁ!」
「あらそうなの。じゃあ、外で待ってる」
そう言って私は風呂場をあとにした。
外に出るとすぐに、風呂場で一人ぎゃあぎゃあ騒ぐ声がした。
あ、くつ下水洗いしてからお湯にするの忘れてた。
「なかなか人がいなくならないね」
公園に着いたものの、もう夕方近くなっているそこでは、カップルがデートを催していた。
「ねえ、ここじゃないとだめなの?」
「そういう訳じゃない。俺もゴミ箱に住むのは嫌だけど、…俺が生まれた場所がここだからな」
少し自嘲気味に笑うアーサー。
いいのかな、私。本当にこれで、いいのか。
だって、アーサーはただの人形なんかじゃない。
もう怖いわけじゃないし、彼に親しみさえ感じている。
…これでいいはずが、ないんだ。
「アーサー、ごめん。
家に帰ろう。生まれた場所はここかもしれないけど、今日から私の家に住みなよ」
私の手から離れ、歩き出していたアーサーは私の言葉に驚いたように振り向いた。
「家に帰ろう…」
「べ、別に泣いてなんかいないんだからな!これは…さっき飲んだ紅茶が、こ・紅茶がだな…グス!」
ATOGAKI
某キャラクターで思いついた話をブリ天にチェンジして書いてみました。
マジで恐怖心を感じながら書きあげました。