第12章 落ちている人形を拾ってはいけない(ヘタリア・アーサー<英>)
「リプ●ンのティーパックの紅茶しかありませんでした」
しかも数年前の奴。
「…紅茶もないのか俺の家には!」
お前の家ではない。とりあえずお前の家ではない。
「ちょ、あの、それ飲んだら、出てってくれませんか?」
「え?」
文句を言った割には器用に小さな手を使ってマグカップで飲んでいたアーサーだが、次の瞬間カップを落とし、ゆっくりとこっちを見た。
ちょっと怖い。
「あの…うちから…」
「べ!別にお前の家に住みたいとか思ってないんだからな!全然こんな家いたくないんだからな!」
紅茶で汚れたブリ天はまた哀れである。
でもやっぱり怖いものは怖いのだ。
こうしてブリ天には出て行ってもらうことにしました。
このまま捨てるのはさすがに忍びなかったので、私はせめてブリ天を綺麗に洗ってあげることにしました。
「洗濯機はいやだ」というので仕方なく、洗面台で手洗いすることにした。
「おい、この家、お前以外に誰かいるのか?」
「え?もちろん。お母さんもお父さんもいるよ」
「それはまずい」
「え…人形の分際で何を考えて…」
「な!違う!!全然そう言うんじゃないんだからな!俺の好みはバービーみたいな人形だから!」
あ、一応人形は人形なのね。
「あー…なんというか。俺は名前を呼んでくれた人以外に、普通の人形じゃないことがばれると魂が消えてしまうんだ。
だから…できるだけ人目は避けたいっていう人形心なんだが」
「…そうなんだ…」
なんだろう。すごく申し訳ない気持ちになって来た。
だって…この子は、私よりももっといい飼い主に出会えていたら…もしかしたら捨てられることもなかったのかもしれない。