第11章 そして賽は投げられた(銀魂逆ハ―シリーズ)
「いやー、女性と二人っきりで旅行なんて何年ぶりかねー。むしろ生れて初めて?」
そう言って近藤さんは恥ずかしそうに頭を掻いた。
そんなに照れられると本当に恥ずかしい。でも、来てよかったなぁ。
ここは田舎の三両列車。
時折激しい揺れを感じる少し古い型である。
目の前に座る満面の笑みの近藤さんは紋付き袴を着ている。どこのお見合いかと思わせる格好だが、手にはカップ酒とチ―カマが握られている。
そういう私も、ちょっとめかしこんだ格好をしているが、茎ワカメに漬物という少し微妙なチョイスのおつまみを握っている。
ボックス席の小さなテーブルには『初夏の湯けむり殺人的列車の旅』という謎の看板が立っている。
「最初にどこを回る予定なんですか?」
「まあ、無難に仏像なんか見ようと思うんだよな…」
「仏像…おっさんだらけの集団が仏像ですか!?…もっと華やかな感じの場所とか…」
「田舎のキャバクラ巡業的な?」
「うーーーーー…ん。…やっぱり仏像でいいかな…」
「よく考えてみろ!いつもおっさんたちは世の底辺みたいなところで生きてるんだぞ!?心の癒しが必要なのさ!救われたいのさ!」